■春■

ふとした瞬間に
髪の毛から
ひなたの匂い

つやつやまるい
はずむような
ひかりの粒子

黄色とオレンジと
ピンクとまぜこぜのしあわせな点描

君の髪からこぼれおちる
今年最初の
春の匂い



おんぼろ一軒家にグランドピアノ

絶品カレーの秘密は世界中を旅してる叔母さんが作る手作りスパイス

おいしいウイスキーをなめながら

日がな1日音を編む

すばらしき哉君のしらべ

インドア王子ばんざい



■そら■



空がひかるって間違いなくある

たぶん

空気の澄みかげん 温度 季節

いろいろあるんだろうけど

北海道の秋の空は間違いなくひかっている

イサム・ノグチがデザインした

モエレ沼公園というのが札幌のはずれにある

そこに小高い丘があって

この秋登ってみた

見たところ45度はある?

と思える急斜面

頂上についたらしっかり汗だく

少し空に近づいてひかる空を確信する

突然背後で声がした

「ここは大事な地球だね。

見れば私の腰よりちいさな男の子

やつはさらにこう言った

「地球には、緑!」

あいつ。

絶対いいオトコになる。

まちがいない。





■ねぎ■

お向かいに畑がある

ねこのひたいよりは大きいけれど

そうだなあ

ねこのあたまくらい

そのねこのあたまくらいの

畑をつくってるのが

まついさんである

まついさんはかっこいい

だいいち、寡黙だ

毎日一緒にいる家族だったら

何を考えているかわからなくて

やきもきしちゃうかもしれないけど

お向かいの畑をたがやしてるまついさんと、わたしであるぶんには

それは

素敵なおじいちゃん度を高めることになる

まついさんはこの春、大量のねぎをつくった

ぬいていきな、と言われかなりいただいた

銀座へ仕事にゆくとき

おすそわけに40本かついでいったくらいだ

このときばかりは自分が

テナーサックス奏者とかではくて

ボーカルでよかったとつくづく思った

しかもですね

まついさんのねぎは

たいへんに香り立つのだ

銀座だらうと

電車のなかだらうと



■メロン■

実家からメロンが届いた赤い果肉のニクイやつである
先日ダイエーに行ったら

御中元コーナーに堂々とこんな表示が

「新十津川メロン」

†か、か、か、かんどう。

あんなに小さな町なのに

住所には「字」がつくのに

「新十津川メロン」
夕張メロンに、負けるとも劣らない

その響き

「新十津川メロン」

天下のダイエ−のお中元を一手にひきうけた

そのかっこよさ

たちどまり何度もながめ

携帯で写真を撮り

それでも離れがたくて

売り場をうろうろ3周

そんなわたしは

決して

不審者ではありません

悪しからず



■「北へ想ふもの」■

夏 ゆらゆらと かげろふの立つ

不意に思う

吾の不在 ここではない未来

歌われるべき歌

語られるべき物語

見知らぬ旅のはじまり

秋 きらきらと こうばしくひかる

不意に聴く

風の唄 土の声

涙こぼれるような 金色の季節

冬 ひらひらと粉雪の舞う

不意に香る

なつかしき手

母という匂い

くりかえされる日々真っ白な世界に刻まれた

ひとすじの軌跡

春 迷いなく 息吹(いぶき)立ち

不意に知る

私という存在

ここでしか生まれ得なかった未来

歌いゆく歌

語りゆく物語

そのすべての生命(いのち)というべきもの

北に想ふこと

北に想ふもの



■雨■

昔から雨が好きな子供で

しっとりぬれる

空気がたまらなくなつかしく

覚悟してしまえば

足もとのつめたさだって

なんのその

今しかない

グレーに煙る空も

なまめかしくたたずむ

公園のブランコも

胸がいたくなるほどきれいな名前の

青くて紫色のあの花も

雨の香を焚きしめて

誰かを待つ6月の午後

ばんざい



■詩人1■

突然ですが詩が好きです

さかのぼれば小学6年生くらいのときに

教科書のほかにあった資料集

「国語便覧」ってやつ

あれにのっていた

詩人の詩は、全部読んだ

去年の秋

石垣りんさんの「シジミ」っていう詩に

曲をつけた歌を歌った

最後、鬼ババが笑う箇所があり

「イ−ッヒッヒッヒッヒ」って

高笑いをするとこを絶賛された †

複雑だった。。



■ちいさい ひと■

とてもかなしいことがあったとき会いに行くともだちがいる

彼女には4才の息子(Lくん)と

3才になる娘(Mちゃん)がいて

これまた信じられないくらいかわいいのだ

このあいだは昼間からみんなでお布団にくるまって

きゃーきゃー遊んだ

そしたらL君が

「うたのおねえちゃん(あたしのことをそう呼ぶ。)ここどうしたの?」

腕を見ると、ちっちゃな傷

彼はばんそうこうを貼ってくれて

得意気にこう言った

「うたのおねえちゃん!このばんそうこうがとれてもね!

なおってなかったらね!Lくんちにおいで!

Lくんがね!また貼ってあげるから!うちの場所はね!」

と、住所を教えてくれた

「うちにきたらね!Lくんが迎えにいってあげるから!

 すぐね!こうやってね!飛び出してね!走っていってあげるから!

 見てて!Lくんはやいんだよ!!」

と そのとき電話が鳴って

「L、電話でて〜。」と母。

だだ〜っと走ったけど間に合わなかったLくん

ぽつりときこえてきた

彼のひとりごと

「Lくん。 おそい。」

ふにゃふにゃになったばんそうこうが

捨てられやしない

まったく



■蒙古斑■

蒙古斑=もうこはん

「こどものしりなどにある、青黒いあざ。黄色人種に多い。」

             (小学館 新選国語辞典より)

蒙古斑があるのは、日本人とモンゴル人とフィンランド人だけなんだ、と聞いた。

だけ、かどうかは、定かではないけれど、

金髪で緑色の目をした人たちのおしりに、

蒙古斑があることが、すごく不思議だった。

22才のときに行った、フィンランド。

赤い毛糸の帽子をかぶって、リュックをしょって、

お菓子やさんに入ったら、頭をなでられて、

チョコレートをもらった。

ユースホステルに大型長距離バスを、

横付けしてくれたおじさん。

マイナス36℃で乗った、北極圏の犬ぞリ。

街中のひとが、私をみるのよ。って、

ちいさなコンサートホールで、3時間話し続けた日本人のおばさん。

そのなかでも特筆すべきは、人生初の入院と手術。

結局なんでもなかったのだけど、今も家族はこのことを知らない。

なにせ、アジア人は若く見えるらしいので、

ちいちゃい子だと思われ、入院中一日一回のはずのおやつが、

毎食後もらえた。

ベリーのジャムがはいった、ドーナッツ。

フィンランドで、とってもおいしかった食べもののひとつ。

ひとのおかげで、なんとか無事に終わったひとり旅。

最後は自分のしょったリュックの重みに負け、

† 機内でスチュワーデスさん巻き添えにして、みごとにころんだ。

わたし。

なんて、おっちょこちょいなんだろう。

そして。

蒙古斑の話はどこへいったんだろう。



■へんなかお■

へんな顔が得意である

十八番はダダ

ウルトラマンに出てくるやつである

大学のときふと思いついて

マンションのみどりの薄明りさす廊下で

横にいた友だちにいきなりやったら

彼女はぎゃあ、といってころんだ
いろいろバージョンはある

10円玉をひろって喜ぶダダ

ジェットコースターに乗って恐れおののくダダ

スキップするダダなど

でも一度披露すると

みんなもうやるなという

おもしろくないのかと問えば

おもしろいけどもうやるなという

なんでもひどすぎるからだという

。。。そんな

ひどい。。。。。